目の前にあるものに

「美」を感じたのなら、

そこには「秩序」がある、

ということだから、



目の前にあるものに

「美」を感じない場合、

わたしの世界の「秩序」は

すでに崩壊しているのです。



「美」を求める、

「美」を生み出すとはつまり、

崩壊した世界の秩序を再建する、

ということで、



これが普遍的な真理だとしたら、

「美」を追い求める人間の行為が、

どれほど切実なものであるかが、

分かると思います。






ここ数日、

わたしの世界は

徹底的に壊れています。


わたしの、初代骸骨の絵。

これを描くきっかけをくれた、

ピアニストがいる。 





「バッハは僕の神」





彼はそう言う。

わたしも同じ神を感じる。

だから演奏を聴いた瞬間、

彼がどんな世界をみているのか、

一瞬で理解した。



そして生まれたのがこの絵。





彼がわたしの絵を凝視している。

何秒どころではなく、何十秒も。

もしかしたら、

1分以上だったかもしれない。

とにかく、じいっと。

瞬きもしてないように見えた。





彼の目の奥から、

涙が溢れてくるのがみえる。

彼の美しい目を覆って、

灯りに照らされキラキラする。




映画のワンシーンのような時間だった。





時が止まったのではと思うくらい、

長い長い、

絵との出会い。





そのあと、

彼は絵を持っていないほうの手で、

わたしを抱きしめた。

とてもとても力強く。

少しも身動きがとれないほど、

苦しいと感じるほどに力強く。





あんなに美しく、

透き通った純粋な気持ちで

男性と抱き合ったのは、

生まれてはじめてだった。





彼がわたしの絵を見て、

わたしを抱きしめ、

その腕を解くまで、

実際にどれくらいの時間が過ぎたのか、

分からない。





だけどわたしには、

その時間が永遠であるかのように、

無限に続いているかのように感じられた。

2年以上経った今でもさえも、

わたしはその時間の延長にいる。





彼の音から放たれる音楽の神への祝福が、

いつもわたしを奮い立たせる。

彼がピアノでその想いを表現するように、

わたしは絵で神を祝福したい。

そのために毎日、描いている。





わたしは必ず、

彼が感じている喜びに到達する。

彼か見ている景色を共に見る。

それは生きる理由そのもの。





必ず、また彼に出会うことになる。





その時は、もっともっと巨大な規模で、

彼の見ている景色を絵にして、

360度つつみこんであげよう。





1月の個展は、

そこに至るまでの最初の最初の一歩だ。







【個展】2021/01/08 ~ 16 東京都中央区銀座1-9-8 奥野ビル B1F 巷房2


【solo exhibition 】2021/01/08 ~ 16 KOBO2 (B1F Okuno building 1-9-8 Ginza Chuo-ku Tokyo-to JAPAN)



「雨さんは、柔らかくて底のない魂で、眺めていたら僕の周りの景色まで変わってしまうかのような、そんな存在です。」



恋人が送ってくれた、別れの手紙に記されていた言葉。



人間は柔らかく底知れない魂を持っている。夜の海のような魂を。



底がないというのは無限の可能性を端的に示している。



底無しの闇は恋人の中にも存在していたはずだ。



彼はわたしを抱く度、柔らかく底のない魂とその容れものである体を必死に貪っていた。



彼とは3年の間に140回ほどセックスをした。



わたしの闇は気持ちよかったでしょう?



そして温かかったでしょう。





© 2017 by ame kaguyama