#01 複数の顔を持つアーティスト【香久山雨スペシャルインタビュー】


香久山雨スペシャルインタビュー「創造の向こう側へ」ナビゲーターをつとめます、マインドフルネス・セラピストの三嶋かよです。


2021年1月に個展を開催する、香久山雨さんにお話を伺うスペシャル企画です。雨さん、自己紹介をお願いいたします。



香久山雨:私は現在31歳で画家として活動する傍ら、オンラインで絵画教室の先生をやったり、エステサロンの経営を5年前から続けています。


他にもビジネスとか、パートナーシップのコンサルタントをやったり、医学系の学会誌で論文を寄稿したり、興味のあることをいろいろとやりながら生活をしています。



三嶋かよ:私と雨さんの関係について、ちょっとだけお話ししていきたいんですけれども。二人のやり取りをさかのぼったところ、初コンタクトが2019年の2月でした。


私は雨さんのブログの読者で、当時個人セッションを受けに行ったのが一番初めの雨さんとの出会いです。その後雨さんが主催されていた、ビジネスコンサルに参加したり、かなり濃厚な半年間を過ごしたんです。


その前後に、会社員をやめてセラピストになって、その後シンギングボウルのセラピーを私は行ってるんですけども、そのセッションを雨さんが受けてくださるようになったりして。雨さんが私のクライアントでもありますし、私が雨さんのクライアントでもあるという、とても面白い関係なんです。


雨さんには、様々な顔がありますよね。先ほど自己紹介していただいた通り画家であり、アーティスト表現者であって、文筆家でもあってビジネスコンサルもされていらっしゃいますし、サロン経営もされています。そういった様々な顔がある中で、画家としての雨さんというのは、ご自身の中でどんな役割があるのか、どんな存在であるのかお聞かせいただけますか?



香久山雨:ちょっとここからリラックスして話したいので、タメ口で行きます!

私にとって画家っていう仕事は、本当に浮世離れしまくってて、やばいぐらいなんだよね。


文筆業とかコンサルとかサロン経営っていうのはお金が貰えるっていうことが分かってるからやってる。で、お金が貰えるって分かってる中で、好きなことだから続けられてるんだよね。だけど画家っていう仕事は本当に、持ち出しばっかみたいな。持ち出すだけ持ち出して、それが本当に利益になって返ってくるか、なんてさっぱり分かんないだよね、お金に換算しちゃうと。


だけど、なんでそれでも真剣に絵の勉強し始めて、もう15年経つんだけど、なんで15年やってきてしまったかというと、自分の知らない自分にやっぱ出会ってしまうからなんだよね。その自分の知らない自分っていうのに出会った時に、私は私をコンサルしてるって言うか、自分で自分をセッションしてるって言うか、自問自答の時間なんだよね。絵を描いている時間っていうのは。


絵を描いて何か出来上がりましたってなった時に、ハッとするんだよ。なんで私こんなもの作ったのか分からない、いつも。で、この絵の源流っていうか、発想がどこから来たかっていうのもね全然わかんないの。


すごい分かりやすく例えると、私の絵ができる最初の過程っていうのは、夢を見るみたいなところから始まってるんだよね。夢ってさ、実際に眠ってる間に見る夢と将来こうなったらいいなぁみたいな、希望的観測の夢って二つあるけど、なんかどっちも同じで、私にとっては。要するに、現実から切り離された世界っていうことなんだよね。現実から切り離された世界の中に自分がいて、その世界の中で絵がポンって生まれてくるの。


それってどういうことか、よく分からないと思うんだけどね。でも、寝てる時に見る夢っていうのは、寝てるじゃん自分は。だけど脳は半分は起きてるわけじゃん、自分の中の記憶とか経験とか。あとは、その寝てる間の温度とか、その寝てる時の体感が、すごく複雑に絡み合って見るのが夢だよね。私の絵が生まれる時っていうのはね、それと同じことが起きてるの。起きていながら、覚醒してるんだけど、寝てる時みたいなことがね、私の中で起きてるんだよね。


どういう時にそれが起きるかって言うと、散歩して音楽聴いてる時が多いの。散歩して好きな音楽聞いて、フフフーンて歩いてるじゃない?そうしたらね、イメージとしては、私の頭の中に四角い金属の板みたいなのがあるの。そこにふとした瞬間に磁石のちっちゃい玉みたいなのが、バババババてくっついてくるのね、バーって。それが、その磁石があるべき位置にピタピタピタッとその板にくっつくと、それが絵になってるの。


そういう感じで歩いて音楽を聴いてると、瞬間的に、こうファーっと頭の中に絵が出来るの。これは意図してないじゃん、私が。意図してないから夢と一緒なの。だから私の潜在意識みたいなものが、多分ね、何かしらのきっかけで、ポンと新しいイメージを作るんだよね。それが私にとっての絵で、私が意図的にやってることじゃないから私にはわかんないんだよね。


私が絵を書く意味っていうのは、自分の中から生まれてきたよくわからないものを自分が描くことによって追体験するじゃん。もう頭の中にはあるんだけど現実にはないから、私は自分の体を使ってそれを創るわけじゃん。創る過程で理解してくの。創りながら、この絵がなんだったのかっていうのを。出来上がった時に「あ!」って思う。これはこういう事だったんだっていうのが。でも、出来た時に分かることまでは、まだ分からない時もある。まだ分からなかったら、展示したりとか自分で長く眺めながらまた考えるよね。自分が思いついたこの絵が、なんなのかっていうことを問い続けるの。


だからこういう仕事は、他のお金をもらってその中で頑張る仕事では、ちょっと難しいじゃん、こういう経験は。難しいし、こういう経験をしたことがある人っていうのもどのくらいいるか、ちょっと分からないんだよね。かよさん、ある?ない?



三嶋かよ:ないない!初めて聞いた!その散歩しながら、そういう絵が浮かんでるって言う事も初めて聞いたし、それがきっかけになって、それを表現することで、それが何を表してるのかっていうことを自分で探っていく作業なわけだよね。絵に描くっていうことがね。



香久山雨:私はこういう話を普段はあまりしないよ。だって変な話じゃん、話してもよく分かんない。頭の中に金属の板があって磁石がくっついてくるんだよ。ちょっと怪しいじゃん。怪しいし、何て言うのかな、私は夢もすごいいっぱい見るんだよね。意図的に、3日間くらい眠り続けるとかいうのもやる。


というのは、何か現実に対して不満があるの、そういう時は。不満があって、でも不満があるけどどうしたらいいのか分からない時ってのがあるじゃん人って、その時にね。不満がある現実をどれだけ深掘りしても、不満しか出てこないんだよ。やっぱり、現実の中では。だって私は不満にフォーカスしてるからね。だからこんなことやってても埒が明かないから寝ようって思う。


寝ても、体の疲れが取れちゃうと、ぐっすり眠るって出来なくなるんだよね、人って。だから浅い眠りが続くんだよ、二日目くらいから。するとね、絶対夢を見るの。すると現実と関連性のある、でも現実とは違う夢っていうのを、いっぱい見るのね。その中で、現実に起きてることと、ちょっと夢で起きてることの価値が同じぐらいになってくるのがあるんだ。その境目がなくなってくるの。夢と現実の境目がなくなって合体するのよ。合体して、あ!こういう現実にしたいっていうのが分かる時がなんかくるんだよね、寝続けてると。夢の中で答えを作ってる、自分で。そうなったら起きて活動する。



三嶋かよ:なるほど。だから肉体的に体を休めるっていうのはもちろんだけど、答え合わせに行く。



香久山雨:そう、眠ることで答え合わせにいくの。結局さ、私たちが起きてる時に使ってる顕在意識ってやつって5%しかないとかってよく言うじゃん。これは私本当にそうなんだろうなって思うの。こういう経験を通して、自分にとって本当に大事なことって、やっぱね顕在意識に昇ってきてないんだよね。まだ気づいてないのよ。だから気づきに行きたいの私は。積極的に気づきに行くために、やることが寝ることと、絵を描くことなんだよね。



三嶋かよ:それはちょっと新しいね。そういう風に成り立ってるって言うのは。今まで雨さんとたくさん話してきたけど、初めて聞いたこと。



香久山雨:変な話しすぎて、あまり話したことなかった。せっかくだから話してみたんだけど。それでこの、私と夢の関係とか私と絵の関係っていうのが、すごい相互的じゃん。ものすごく私が、こう、絵を描くためにリーダーシップを取って何かをやってるって言うのとは違うじゃん。お互いに支え合ってるっていうイメージなのね。これが何か私とかよさんの関係にすごく近いなって思ってる、今。


結局さっき言ってくれたみたいな、かよさんが私のクライアントで私もかよさんとクライアントなのよ。普通は、まあ普通っていうか、よくあるビジネスの関係って言うと、あなたがクライアント、私は仕事する側っていうか、与える側みたいな感じで、与える側と与えられる側っていうのが結構固定してる関係が多いよね。



三嶋かよ:その関係はあまり崩れることはないかも。



香久山雨:崩れることはないんだよ、でそういうカチッとした崩れない関係というのが色々あるっていう形だよね、今のビジネスの世界って。なんだけど、私は今までずっと絵を描いてきて、この与える側と与えられる側があるっていう関係性っていうところから、創造的なものが生まれないっていう確信がある。



三嶋かよ:え、それはどうして?



香久山雨:どうしてかっていうと、何て言えばいいかな。結局、自分っていう人間は多面的じゃん。ものすごい色んな自分がいるじゃん。自分の中に自分でも気づいてない自分がいるわけじゃん。今は私が与える側です、仕事人としてプロとしてやりますっていう時って、そのプロとしての自分しか出しちゃいけないと思ってるから、みんなそれが責任だと思ってるじゃん。だから、なんか甘ったれっていうかプライベートな自分の顔って出せないじゃん。


出すにしても、ちょっとなんか変化球として出すくらいの話であって。あくまでもプロとしての自分っていうのがそこに枠として最初にある。その中に自分をねじ込んでいくみたいな、そういうイメージなんだよね。


逆に、何かサービスを受け取る側、与えられる側の自分っていうのも、与えられる側はこうあるべき、みたいなのがあるんだよ。やっぱり期待値がある。だから役割に自分を押し込んでるんだよね。良いカスタマーとはこういうものだとか、良い仕事人とはこういうもんだっていう固定観念が、私たちの中には絶対ある。その中でどれだけ力を発揮しようと思っても、限界があるのよ。


これは私の中にあるその現実の世界を見てても、その枠の中でしか活躍できないというのに近い。だから私はその中で起こりうる事っていうのは、たかが知れているって思ってるんだよ。だから夢を見に行くの。その枠を外したいからっていう目標が、私は絵描きとしてずっとあった。それを現実にしたかったんだよ。やっぱり、現実にする一つの手段として絵を描くっていうのも、もちろんあったんだけど、私は欲張りだから、それを現実の人間関係にもやっぱり広げたかったんだよね。絵と私の関係性を、本当にリアルな人間と私でも同じ関係性を作りたかったの。だから画家じゃなことも、いっぱいやってきたんだよね。


画家が別に、サロン経営とかコンサルなんてしなくていいの。私のさっきの自己紹介聞いて、何で画家なのに医学誌に小論文を寄稿したり、コンサルとかサロン経営もしなくちゃいけないんだって思われるだろうけど。私はどうにかこうにかして、自分が理想としてる関係性っていうものを、現実の世界にねじ込みたいんですよ。人と人との関係性を。


絵描きってすごく、絵を完成させればそれで仕事が終わりって思ってる人多いかもだけど、実はそれは仕事の半分でしかないんだよね。その創り上げた絵を、どう社会に溶け込ませてくっていうか、社会でどう認知されていくかっていうのが、もう半分の画家の仕事なの。日本の美術の業界は、その仕事をちょっと疎かにし過ぎてるのがあると思う。職人芸になっちゃってる。


アーティストっていうのは、本来文化を創るとか社会を創る仕事なんだよね。だから私はまず、絵描きとして理想的な自分はこう、と考えた時に、ハードルを高くしすぎた。だから一気にそこに行くのは無理だって思ったの。そこに辿りつく前に、お金稼げないで飢死ぬなと思ったんだよね。だからとりあえず、そこにたどり着く前に、画家よりも楽に稼げるフィールドがあるなと思った。そこで自分なりに、理想とする人間関係を構築する努力をしたかった。それで大学出てすぐに美容業界に入って独立した。なので実は、私が目的として持っていることっていうのは、絵を描いてても、サロン経営をしてても、コンサルをしてても、文筆業をしてても同じなんだよね。


固定化された人間関係、その役割っていうものが最初から決められていて、そこに個人が、生身の人間である多面的な顔を持っている個人っていうのが、ねじ込まれていく。その中で無理して生きていくっていうのではない社会が欲しいんですよ、私は。そういう社会の中で生きたい。だからそれを作ってますって感じ。



三嶋かよ:なるほどね。その枠内での役割を演じてるだけだと、限界があるしね、表現者としても。社会全体が、どちらがというとそうだよね。枠の中にはまっている自分を本当の自分と思い込んでしまっているところもある。



香久山雨:そうそう。それこそかよさんだって、会社員やめたじゃん。

そういう枠の中から出たかったんだよね。



三嶋かよ:出たいと思ってた。



香久山雨:それはひしひしと感じた。最初にセッションに来てくれた時、なんか暗かったもん。



三嶋かよ:そうね、あの時は闇期ど真ん中で。



香久山雨:今これだけ軽やかに色々話して下さってるけど。すごい神妙な面持ちだった、最初に私のセッションに来てくれた時。



三嶋かよ:そうね、あの時はもう本当に、雨さん何とかして!話し聞いて!っていうテンションだったね。



香久山雨:そうそうそう。だからさ、やっぱりこう長く社会の中で「あるべき姿」っていうものに押し込められて、その中で一生懸命頑張ってしまった人の限界みたいなものを、その時私は見てた気がして。



三嶋かよ:そうかもしれない。本当にギリギリ。もう無理だなって。



香久山雨:ギリギリの緊張感みたいなのをね、なんか感じた。だからそういう姿を見ると辛いよね。



三嶋かよ:辛いよね。



香久山雨:私はやっぱり辛いなと思った、あの時のかよさんを見て。でもその時私にできることっていうのは、限りがあるからさ、自分ができることだけして、さよならってしたけど。それでもこうやってご縁が続いて、今こうして会社員だった時とは全然違う顔を持って、社会に出てるかよさんていう人に私は今出会えていて、すごく良かったなって思う。



三嶋かよ:あーそれは嬉しい。



香久山雨:こういうた達成感は、やっぱり自分の頭の中にあった絵が現実に出来上がった時の達成感と同じ同じなの。だから私結構、コンサルとかやってても、すごい熱心だと思うのよ、自分で言うのもなんだけど。



三嶋かよ:すごい熱心だと思う。丁寧。



香久山雨:かよさんが参加してくれてる私のコンサルっていうのが、グループなんだよね。だから私が、他の人にどういう風に接してるかっていうのも、かよさんは見てくれていて、熱心だなって思って見てくれてるわけだよね。だけどそれは、やっぱり自分の中にある、自分が必要としてる社会のイメージに、私が何とかこうそれを作りたいという気持ちがあるから、それだけ熱心にできるんだよね。


世に言う画家という人たちは、どっちかというと内向的ってされてる人が多くて。自分の作品が納得いくように描けて、それがまあそこそこの値段で売れていて生きていければ満足ですっていう人が多いような感じがするけど、私はそんなんじゃ全然満足できない。私が関わる社会ていうものが、私の思い通りになんなきゃ嫌って。理想的になんなきゃ嫌って思ってる。こういうコンサル的な仕事とかも頑張っちゃう。


サロンの仕事っていうのは、美しい人を増やすっていうのは、私の喜びの一つだよね。街に歩いてる人が、美しかったら私は嬉しいし。自分の体を労わるということの大切さを伝えるって事もすごく好き。そういう満足感というのがあるから続けられてるって言うのはあると思う。そんな感じですかね。



三嶋かよ:私から見てる雨さんって、画家でもあるんだけど、ちゃんと社会との接点を積極的に取りに行っていて丁寧だし、そうやってグループでコンサルをしたりとかっていうね。私もすごく学ばせて頂いています。


次にですね、画家としての雨さんをもうちょっと掘り下げていきたいんだけど。絵を描き始めた頃、何か小さい頃の思い出だったりとか、エピソード、もしくはなんか好印象的な作品でも何でもいいんだけど、小さい頃の話しを聞いて行こうかな。



香久山雨:覚えてるのは、私の母方の祖母の家に麻雀台があったの。その麻雀って参加できるの四人だけじゃん。私は両親と兄二人がいて、その五人で祖母の家に行くのね。そうすると六人いるじゃん、人が。でも麻雀は四人しかできないじゃん。で、必ずその麻雀からあぶれるのか、私と父なんだよね。祖母と母と兄二人が麻雀する人、私と父は麻雀しない人だった。


父は、部屋にこもって好きな事やってた。私はその時に絵を描いてたんだよ。あぶれ者が何やってたかっていう話し。麻雀に入れてもらえなかった人たちが、何をしてたかっていったら、幼い時の私は絵を描いててね、祖母がお花が好きで、ガーデニングしたり、花生けたりとかすごい好きな人だったから、みんなが麻雀してる脇で、私は花の絵を書いたりとか。あと、自然が多い所だったから、ちょっと外に出て写生したりとかしてね。何かを見て描くのが好きだったね。私の母の話だと。絵が描けるものを持って、美術館とかでねやっぱ写生してたんだって。小ちゃい時から。



三嶋かよ:それは雨さんは覚えてないの?



香久山雨:あんまり覚えてないけど、本当に小さい時から物を見てずっと描いてたよって。で、とんでもなく無口だった。淡々と描いてたらしくって。だから私は、幼少期の時に社会と関わるっていうのは、やっぱり絵を通してだったんだなっていうのは、今振り返るとすごい分かる。


結局、麻雀とかって、ワイワイ喋りながらコミュニケーション取るじゃん。でも私は全然喋らない子だったから、黙々と紙と鉛筆もって、描く対象がある。でも無言のコミュニケーションというのがそこに生まれていて。出来上がったものを人に見せれば、何かリアクションは貰えるんじゃん。「上手ね」とか。出来上がったものがあったから、私は生身の人間とも話しをすることができたの。絵を通してできたの。やっぱり絵があって良かったなってすごい思う、今は。典型的な暗い子だよね。



三嶋かよ:静かに絵を描いてる大人しい女の子。



香久山雨:でも結局私はそこで画家になろうとは思ってなかった。なんか写生は好きだったの。漫画をそっくりに書くとか、そういうのは大好きだったんだけど、オリジナリティのある作品を描くみたいなことに、真剣に向き合い始めたのは、結構遅かった。それが16とかで。


何があったかって言うと、父が病気で死んだんだよね。私それまで音楽が好きだったから、音大に行こうって思って音楽の勉強してたんだけどね。父が入院してて、助からない病気だったの、癌だったから。どんどん痩せてくのよ、お見舞いに行くたんびに。辛いじゃん、親のそういう姿を見るのは。


どんどんどん小さくなってって、なんか本当に命が終わっていくっていうのを感じる日々。その中で、ある日突然、その父の体がすごい美しいものに見えた。すごい腕が細くなっててさ、もう骨と皮みたいな感じになってるんだけど。その腕を見た時に、なんて美しいんだろうって思った日があったのよ。


私はその記憶を家に持ち帰って、父の手のスケッチをしたの。この時に私、画家になろうと思った。自分の感じたことを絵として表現するっていうことを始めた。



三嶋かよ:表現プラス、記憶を残しておく?



香久山雨:そうだね。この時私が何を感じていたかっていうのと、この時私が何を見てたかっていうのを、残したかったんだと思うんだよね。だって父は死んじゃうじゃん。残らない人なのよ。この世に。だから私が残したいっていうのもあったし。


後もう一個は、感情の処理だったのかなって思ってる。結局、辛いことなのよ、人が死ぬって。しかも親が死ぬ、だからね。悲しいんだけど、悲しいってばっかり言ってちゃ人っておかしくなっちゃうじゃん。生きていけないじゃん、てなった時に、私はその「悲しい」っていう気持ちに「美しい」っていう気持ちをドッキングさせて、生きていくことにしたんだと思う。


美しいものが好きだったから、私は。子供の時から。花が好き、クラシック音楽が好きみたいな感じで、きれいな服も好きで、みたいな。美しいものがすごい好きだから、その、目の前に広がってる悲しい事実を「美しいもの」だって風に解釈することで、それに向き合えるって事だったのかもしれない。もしくは、その悲しい事実にちゃんと向き合うために、無理やり美しいって感じるようにした。



三嶋かよ:悲しみだけに向き合うと、前に進めないからね。



香久山雨:進めなくなっちゃうから、その悲しみの感情をいかに向き合える形に変化させていくかっていう時に、私はそこに「美しさ」というのくっつけたんだと思う。それって頭の中で考えてるだけじゃ、誰にも伝わらないじゃん。死んでいく父さんの手がすごい綺麗でって言っても、大体の人には分からないから、描かなきゃいけなかったんだと思う。



三嶋かよ:雨さんの目から見えている美しいお父さんの手っていうのは・・・



香久山雨:私にしか創れないじゃん。



三嶋かよ:言葉では表現しにくいしにくいしね。



香久山雨:しにくい。できる人もいると思うけどね。小説家とかだったら。この死んでいく人の姿が、いかに美しいかっていうのを言葉で表現する人も、もちろんいるけど、私の場合は絵だった。


私がもっと音楽の才能があったら、音楽で表現できたかもしれない。だけど私はその時に、音楽じゃなくて絵で表現することを自然に選んだから、ここで私の将来の道が一個変わった。それで音大受けるのやめようって思った。美大に行こうって決めた。



三嶋かよ:お父さんとの関係、お父さんが死に向かっていく姿を見ていったっていうのは、悲しい経験ではあるけども、雨さんに与えてくれたギフトかもね。



香久山雨:そうそう、そうだし、やっぱり自分が経験した事っていうのを、プラスに使わなきゃダメだっていうのをもう分かってたんだよね、その時。父がもう助からないって分かったのが私が13か14の時で、死んだのが16の時なんだけど。でももうその頃には、もうさ自分の経験というもの全てを受け入れて、プラスに転換して行かないと、人は生きていけないんだって事はもう分かってた私は。



三嶋かよ:どこか、準備してたところはあるかもね。



香久山雨:そうそう。死ぬまでに3年くらいあったから、その間に準備してたんだと思う。どうやって受け入れて、自分が生きていくかっていう。その時に一番助けてくれたのが絵だったなって。



三嶋かよ:なるほどね、なんかちょっとうるうるしてきちゃった。ありがとうございます。お話しを聞いてると永遠に続いちゃうので、第一回目はこのくらいにしておこうかなと思います。


ありがとうございました。



————


【香久山雨 個展】


2021/01/08 ~ 16 (会期中無休)

12:00~19:00 (最終日 17:00まで)


東京都中央区銀座1-9-8 奥野ビル B1F 巷房2


✴︎ギャラリーホームページ

http://gallerykobo.web.fc2.com/


【solo exhibition 】


2021/01/08 ~ 16

(We open everyday during exhibition)

12:00~19:00 (last day 17:00)


KOBO2 B1F Okuno building 1-9-8 Ginza Chuo-ku Tokyo-to JAPAN



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