#07 個展は夢で味わった感覚の再現 【香久山雨スペシャルインタビュー】


香久山雨スペシャルインタビュー「創造の向こう側へ」ナビゲーターをつとめます、マインドフルネス・セラピストの三嶋かよです。



三嶋かよ:今回でラストになります。7回目の放送ですけれども、今日は1月に控えている雨さんの個展に向けて「今、ここにある想い」を伺っていきたいと思います。まずは、作品の進捗状況を教えて頂きたいんですけれども。




香久山雨:ちょっと前までもう絶対に終わんないと思ってたんですけど、意外と終わりそうな気がします。




三嶋かよ:お!良かった!ゴールが見えてきた(笑)




香久山雨:終わるのが「意外と」じゃだめなんだけどね(笑)でも、本当に思い詰まってた時は「絶対に無理じゃん」とか思ってたんだけど、その山場を越えたら「大丈夫」って思えるようになって、それは現実が変わったっていうよりは、気分かもしれない。大丈夫だっていう気分がないと安心して書けないから、そういう風に気持ちが変わったっていうのは、本当に大丈夫になる兆しだと思います。




三嶋かよ:一時、ちょっと辛そうだなって印象があったけど。




香久山雨:そう、一番大きい絵を仕上げようしてた時が一番きつかった。10月の終わりぐらいから、11月の一週目ぐらいかな。あの絵やばくてさ。




三嶋かよ:やばいんだ(笑)




香久山雨:作業量が一番多い絵を描いてたのね、11月の上旬まで。それがね「やってもやっても終わんないんだけど」みたいな感じだよね。無限地獄みたいな気持ちに陥ってて。でも絹に描いてるので・・・絹って後から、裏から紙を貼るんですよ。描いてる最中、半透明の絹に絵を描いて、それをベリベリベリって木枠から剥がして、後から裏から紙を貼るのね。私がやってるその絵が大きすぎて、自分じゃ裏から紙を貼る作業ができないの。だから職人さんに送るのね。職人さんに送る期日を自分で決めちゃってたから、私。送らなきゃいけなくって、だから納得いってないけど送ったの。送って、本当に清々した。だから何ていうか「もう終わりです」っていう風に決まってて、本当にほっとした(笑)




三嶋かよ:そっか(笑)雨さんにとって、期限があるっていうのはプラスに働いてるんだね。




香久山雨:プラスに働いてる。なんかね、期限があるってもっと辛いことかなと思ってたの、逆に。でも、ないと本当に辛い。




三嶋かよ:エンドレスだもんね。




香久山雨:エンドレスだし、自分がもっと描きたくなっちゃうのなんて分かってるから。好きだから、絵を描くことが。自分の作品も好きだから「もっと手を入れたい!もっと!」ってなっちゃうから、無限に終われない道を自分で開いちゃう。無限ループの道を開いちゃう。だけどそこを「期限」っていうものが閉じてくれる。その扉を閉じてくれるから、私はなんとか生きてられてますって感じ。


だから、私今まで自分が絵を仕事にするって絶対に向いてないと思ってたの。思い込んでた。こだわりが強いから、止められないんじゃないかって思ってたの。描き上げられないんじゃないかと思ってたんだけど、むしろ、期限があれば諦めがつくからいっぱい描けるかもって思ったの、最近。




三嶋かよ:確かに、エンドレスに作品に関わってると終わりがないから、点数が難しくなってくるよね。




香久山雨:難しくなるし、なんか気持ちの行き場がなくなってくるんだよね。だんだんだんだん。何かに向かっていくっていう過程がやっぱりすごく大事なのかなって思って、書きながらね。私の今の場合だと個展に向かって行ってるじゃん。それが幸せってことなのかもしれない。未来があるって事が幸せなのかも。なんかね、捉え直した自分のことを。以外と職業人としての画家もできるかもしれないって思った。チャレンジしてみて本当によかったなって思う。締め切りがあるのはありがたいと思えるようになったのは、すごい大きな変化だね。




三嶋かよ:それがプレッシャーにはならなかったっていうのは、面白い。




香久山雨:ならなかったし、夏と秋に1回ずつ「こういう企画があるから、こういう絵を描いてください」って絵の発注を受けてたの。それもね、ギリギリまで描かない。で、「締め切り当日です」みたいな日に描くのね。でも、その締め切りがあるから描けるというのがやっぱりあって、締め切りってありがたいなって思った、その時も(笑)だって動けるもん、締め切りがあれば。ここまでに出来てなきゃいけないって決まってるじゃん。だから、それまでにできればいいんでしょって話だから、それがあるって言うのは幸せなんだなって。他人が関わってくれてるって言うのは、ありがたいことなんだなって思った。絵に関しては。




三嶋かよ:「いつでもできる」とか「いつかやろう」っていう「いつか」はやってこないんだよね。




香久山雨:やらないんだよね、人って。「いつまでも描けるよ」ではやっぱりやらない。




三嶋かよ:時間があるなし関係ないもんね。そういうことって。




香久山雨:いろんな仕事をやってみたいと思った。絵を描く仕事も。




三嶋かよ:期限があるっていうのも、ポジティブに捉えられたっていうね。




香久山雨:うん、ポジティブに捉えられるようになった。




三嶋かよ:準備は着々と進んで、個展まで2ヶ月弱(収録当時)ですけれども、個展の日を迎えた、未来の雨さんの話をちょっとしたいんですが。初めての個展ということで、多分思い入れもすごく強いと思うんだけど、その個展当日、どんな気持ちの雨さんが、そこに立っているイメージですか?




香久山雨:まず絵に囲まれて、私はギャラリーの中心にいて、さーっと見渡すわけですよ。360度。その時にまず、圧倒される。自分の絵達に「すごい!」みたいな。絵のイメージが頭の中にある時って、一作品ずつしかないんだよね。ポンッポンッって出てくる。で、それを一作品ずつ描いていくんだけど、自分を囲む形でイメージが到来する事ってないんですよ。


いつだったかな、去年の年末、いろんな絵に囲まれる夢を見たの。当時、私が片思いしてた人が、その場所に連れてってくれるっていう夢だったの。「こっちに来な」って連れてってくれて。連れてってくれた場所は、絵がいっぱいある場所。そこで絵に囲まれていて・・・なんだろうな、あの感覚は言葉にするのがすごく難しいんだけど、ここが私の居場所だって思った。その夢を見たから個展をしようと思ったんだ。忘れてた(笑)絵に囲まれた時の幸せって言うのを、私はその夢で感じたんだよね。好きな人が連れてってくれた場所だから、なおのこと幸せだった。


私は、この時に見た夢を現実にしなくちゃと思う。だから「個展しよう!」みたいなのがあって。自分が個展をやることを決めたきっかけっていうのは、もう夢で見てて、その夢の中でその時の感覚を味わってるの。だから知ってるのもう。どんな気持ちになるのかは。それは圧倒的な感覚なの。これが!私の求めていた場所だ!っていう確信というのも、私は自分の個展に求めてる。




三嶋かよ:1回目でも話していた、その、夢の世界を現実とこう・・・まさにその瞬間だよね。




香久山雨:そうなの。だから夢の中で一回味わってるから再現は簡単なの。知ってる感覚だから。知らない感覚じゃないから。ただ、やっぱりそこに到達するまでに

やらなきゃいけないことがたくさんあって、それは大変だけど、でも行くべき目的地はもう私は知ってる。だから別に心配はない。




三嶋かよ:なるほど。力強いね。個展が始まってから、期間中はどんな気持ちだろう。その時の雨さんって。




香久山雨:毎日いようと思ってるんです、バックヤードに。自分の絵を度々見ることになるじゃない?少しずつ「圧倒的的な感覚」っていうよりは、親しみを込めた感覚に変わっていくっていうイメージがある。親しい存在になっていく、絵が。個展が終わる頃には、もうこういう空間があるのは、私の人生の当たり前っていう風になってるって感じ。始まる時は圧倒されるけど、終わる時には当たり前になってる。




三嶋かよ:ある意味、特別ではなくなるっていうことなのかな。




香久山雨:これが私の当たり前になる。だから、それが当たり前になったら、今度はもっと違った形の特別を必要とし始める、私は。この当たり前を土台に、もっと違う特別を手に入れるっていうことを考え始めると思う。だからまた新しい絵を描き出すと思う。




三嶋かよ:終わった瞬間に、もう次の一歩を踏み出す。その次の展開が見えてるんだよね、雨さんの中で。具体的ではないとしても。




香久山雨:感覚はある。感覚があってそれが具体的な形になるためには、現実にそれを起こしていかないといけないってだけなんだよね。夢の話もそうだよね。感覚はある、だけどそれを現実に落とし込むためには物理的な作業が必要なの。個展をするっていうのもその一環かな。




三嶋かよ:先のイメージまでもかなりクリアになってるね。感情としては。




香久山雨:感情を先に発見してるから動けるんだよね。じゃないと不安で出来ないから。




三嶋かよ:その個展が、ある意味大きな転機になる気がしていて。未来の話をしてくれたけど、個展をどんな次の展開のきっかけにしたいと思っていますか?




香久山雨:本当に人を信じるきっかけにしたい。美術業界っていうものに対して、疑心暗鬼だって話を前にしたじゃないですか。疑心暗鬼な自分がその世界に居ちゃいけないって思ってたんです。だって信じてないから。信じてないのに、なんでその場所にいなきゃいけないんだって思ってたんだけど。信じてなくっても、コミュニケーションは取れるなって最近思うようになったんだよね。


コミュニケーションの一つとして「私はあなたのこと信じてないんですけど」って言ってもいいわけじゃん。そこから生まれてくる対話って絶対あるから、そういうものも大切にしていけば、何かしら私の居場所っていうのはできていくんじゃないかなと思ったの。今まで自分に対して、ネガティブなイメージばっかりだった、美術の業界が。そういう風に見てるのは、私の視点なんだよね。私の物の見方がそうさせてて、私の物の見方が、私を美術の業界から遠ざける原因になってただけ。心は許してないけど、別に。そういう人に対しても、そういう業界に対しても、ちゃんと意見を言える自分であれれば。私にはちゃんと居場所が出来るなって、今は思ってる。今までだったら避けてた人間関係とかも受け入れて、いくつか携わっていく、そういう転換の個展にしたい。




三嶋かよ:「居場所」っていうキーワードが印象的だったんだけど。




香久山雨:居場所がないって思ってた。絵を描くのが好きだけども、私の絵を受け入れてくれる居場所はない、私の絵を受け入れてくれる人はいない、とか。私の絵を受け入れてくれる場所はないって思ってた、ずっと。それは、私の物の見方だからね。そうじゃない物の見方もできるのに、私はやっぱり嫌だったんだよね。「私には居場所なんかないです」って言う、それにある意味すがっててたから、それが原動力だったから。でも、もうそういう原動力で進むのは終わりにしてもいいなって思った。




三嶋かよ:なるほどね。それを終わらせるきっかけにもなるのかな。原動力また変わってくるよね。




香久山雨:そうそうそう。エンジンの出所を変える感じ。





三嶋かよ:個展をやるって初めて聞いた時から、たくさん雨さんと話してきて、状況の変化もそうだし、精神的な波もあったと思うし・・・いよいよ作品を実際に私が見られるっていうこともそうだし、この過程を近くで見て来られたってこともすごく幸せだなって思うし、こうやってお話ができるってこともそうだし、本当に楽しみにしています。




香久山雨:ありがとうございます。





三嶋かよ:香久山雨スペシャルインタビュー「創造の向こう側へ」7回にわたってお送りしてきました。貴重な時間を過ごせたなと思います。これがちゃんと、形として残せることがとても嬉しいです。皆さんも聞いてくださって、ありがとうございます。是非、1月の個展に足を運んで、雨さんの作品を感じに行ってください!ありがとうございました。




香久山雨:ありがとうございました。

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